トゥフィッラの名前の由来は16世紀に遡り、アスコリ・ピチェーノ市への出入り口の1つであるポルタ・トゥフィーラから来ている。レモンやグレープフルーツなどの柑橘系の心地良いアロマ。
力強い果実味と清涼感のあるハーブのニュアンスが口の中を包み込み、フレッシュな酸が上品な余韻へとつながる。
【生産者紹介】シモーネ・カペッチ
”ペコリーノを主体とした白の品質向上に注目が集まるマルケ州。
2011ヴィンテージでこの品種を用いたオッフィーダのアペラシオンがD.O.C.G.に昇格した。
カペッチ家が運営するサン・サヴィーノはガンベロ・ロッソでこの躍進の「けん引役」と称されるペコリーノのトップ生産者だが、この造り手がいなければ、いまだにペコリーノはD.O.C.G.たりえなかった可能性についてはあまり知られていない。
ペコリーノは、8月末~9月中旬に収穫される早熟の品種で、熟すのが早くても、糖・酸ともにしっかりのったブドウが得られる。
羊がこのブドウを食べるのを見たローマ人がワインを造りはじめたともいわれる歴史あるブドウだが、近代に入り10月初旬に一斉にブドウを収穫するスタイルが取られるようになると、早熟で皮が薄いペコリーノは腐りやすい駄目なブドウとして扱われ、植え替えられるようになった。
更に、自然と収量が低くなる性質から、1980年代のワインブーム時にはより多産の品種に改植されてしまった。
19世紀末のフィロキセラのせいで、元々のブドウの数が少なかったことも影響したと推測されるが、1990年代頃にはペコリーノは原産地のマルケの生産者さえほとんど知らない存在になってしまったのである。”
”ペコリーノが姿を消した当時のサン・サヴィーノ当主ドメニコ・カペッチもこのブドウについての知識はなかった。
しかしドメニコはある日、内陸の村アルクアータの標高700mを超える山の上のワイナリー跡地に、樹齢100年の土着ブドウの古樹が現存しているという噂を耳にし、興味をかきたてられた。
「この土着ブドウのポテンシャルがどれほどのものか知りたい」。
彼は、一個人の趣味ではなく、マルケに受け継がれたペコリーノのポテンシャルを公明正大に証明しようと決め、この古樹からマサルセレクションで約80km離れた自分の畑に接ぎ木した。
1990年にマルケ州政府の支援を受けた彼は、トレッビアーノやシャルドネ、リースリングなど、国内外の主要な白品種との比較実験を開始。栽培はサン・サヴィーノが、醸造・分析はマルケ州が担当した。
州政府の後ろ盾のおかげでつぶさにブドウを観察し、成分分析を行い詳細なデータを得ることができた。
3年に渡る実験の結果、ペコリーノには優れた白を生み出すポテンシャルがあることが判明。
ドメニコは本格的に『失われたブドウ』ペコリーノのワイン造りに取り組んだ。
この品種について十分な知識を持つ者がいない中、先駆者として相当の苦労があったことは想像に難くない。
しかし、その情熱は息子であり現当主のシモーネに受け継がれ、彼がペコリーノから生み出したチプレアは、2008ヴィンテージでマルケのペコリーノ初のトレビッキエリに輝いた。
マルケの白品種として、名実ともにこのブドウの復活が認められた瞬間である。
現在では25haの自社畑のうち8haにペコリーノが栽培されている。
標高250-300m、遠くアドリア海を望む急斜面に位置する畑では、他にもモンテプルチアーノやサンジョヴェーゼなどの土着品種が植えられている。
これらのブドウを用いた赤は、当主のシモーネのおおらかな人柄を反映したかのような豊かな果実と肉付きの良いストラクチャーが魅力である。
最良年にしか生産されない赤のトップキュヴェ、クインタ・レジオは、2ヴィンテージ連続でルカ・マローニにより赤ワイン部門のトップ3に選ばれている。
Tufilla / simone capecci